【当面の主要な研究課題】
■ 海洋・湖沼環境におけるクロロフィル色素の代謝プロセスの解明
この研究では,顕微観察と局所的化学分析,及び新奇な生化学的アプローチを組み合わせることで,環境動態分野における新規な方法論の構築を試みます。クロロフィル色素が非光合成生物による摂食・排泄過程において,化学反応性を制御され,分解・ないし無毒化されていく機構の解明を目指します。
■ 紅藻系二次共生藻類の進化からみた顕生代地球生命圏の進化
地球生命圏は,太陽から放射される光エネルギーを化学的エネルギーに転換する光合成により支えられて今日に至ります。現在の光合成生物の多様性のほとんどは,実は水圏の微細藻類にあります。中でも,現在の海洋で主役の座を占める紅藻系の二次共生藻類の進化史に着目し,顕生代の藻類進化の理解を目指します。
■ 新しいクロロフィル色素,新しい色素組成の探索
先日,近赤外領域に吸収を持つ新奇な色素クロロフィルfが報告され,同じく近赤外領域を吸収するクロロフィルdを用いる藍藻の多様性と分布の理解も進んでいます。ここでは,未知のクロロフィル色素を探索する環境試料分析や,クロロフィルcの起源を探る微細紅藻の色素組成の精査を試みます。
【その他の研究課題】
■ 絶滅境界をはさむ生命圏の進化
地質学的な時間解像度以下で起こる大量絶滅現象の「生物学的プロセス」の理解は,「事象の同時性」から理解される「絶滅のトリガーイベント」の研究とは異なり容易ではありません。本研究では,「大量絶滅のプロセス」と裏表であると考えられる大量絶滅後の「回復のメカニズム」に関する多元的な理解を試みます。
■ 光合成共生関係の進化の解明
化石中に残された生体有機分子起源の化合物の各種化学分析に基づいて,絶滅した生物の光合成生物との共生関係(底生大型有孔虫やサンゴ,厚歯二枚貝,以上巻きアンモナイトなど)の進化の理解を試みます。一方で,現存する光合成生物共生系のゲノム解析に基づく研究の成果と合わせて,総合的なアプローチをとります。
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