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新しいクロロフィル色素,新しい色素組成の探索

クロロフィルf

昨年の暮れ,シドニー大学のMin Chen博士らのグループがこれまで知られていなかった新しいクロロフィル色素「クロロフィル」を西オーストラリアのストロマトライトのバイオマットの中から報告しました。続いて今年の春,京都大学の宮下英明博士のグループがクロロフィルを生産する生物を琵琶湖から分離することに成功しました。この色素は近赤外光領域に吸収帯を持ち,通常の光合成色素ではカバーされない光を捉えることができます。この新しいクロロフィルの光合成における役割は未解明ですが,15年前に同じ宮下博士がクロロフィルを生産する藍藻アカリオクロリスを発見した時と同様に,これからこの色素の生理学的な役割が解明され,光合成生物による新奇な光利用の実態が解明されていくものと期待されます。

クロロフィルdの汎世界的分布

私が宮下博士らと共に,やはり近赤外領域に吸収帯を持つクロロフィルとその分解物が,世界中の水圏環境(海や湖)に見いだされることを報告したのは,長い光合成研究の歴史の中ではごく最近の2008年のことです(右図;Kashiyama et al., 2008cより)。このように,地球上にはまだまだ知られていない光合成色素が存在している可能性があります。クロロフィル色素の中には,化学的に非常に不安定で,分析の都合上検出が難しいものも存在することが分かってきました(Kashiyama et al., in prep.)。新しく開発した分析法を用いて,様々な環境試料を分析する価値は大いに高いといえるでしょう。

また,「未知の色素組成」を持つ生物の探索も,光合成生物の進化を考える上で大いに価値があります。特に,クロロフィルの起源を探るべく,未知の「クロロフィル生物」の探索を目指します。


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Yuichiro Kashiyama, FUT