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紅藻系二次共生藻類の進化からみた顕生代地球生命圏の進化

藻類の進化

Falkowski et al. (2004) は,生命科学者と地球化学者の双方に,海洋における藻類の進化について重要な問題提起をしたランドマーク的論文です。彼らの論文は,古生代の海洋で繁栄した緑藻のグループが,顕生代の中葉に,現在の海洋に見られるような紅藻系二次共生藻類に取って代わられている地質学的事実を提示しました。古生界の藻類の化石記録はきわめて限定的ですが,古生代には緑藻類が主要な基礎生産者だったと考えられます。そしてその緑藻の仲間から陸上植物が進化しました (The land is ”green”)。一方,中生界に入ると,三畳系上部から渦鞭毛藻,ジュラ系から円石藻と珪藻の化石記録が始まり,その多様化の化石記録は,現在につながる紅藻系二次共生藻中心の海が,中生代以降に形成されていったことを示唆します。紅藻系二次共生藻類とは一次共生藻類である紅藻を細胞内に取り込んで新たに自分の「葉緑体」化させることで,植物的に生存可能になったプロティスト(かつて原生動物と呼ばれた真核生物の多様性のほとんどを占める単細胞の生物たち)のグループです (The ocean is ”red”)。

クロロフィルcの分子化石

本研究では,分子化石,特に化石ポルフィリンを用いた藻類進化の軌跡を理解するための新しいアプローチを提案しています。化石ポルフィリンは,各種クロロフィルが続成作用を受けて堆積物中に保存される”光合成の化石”です。全ての緑藻はクロロフィルを生産し,ほぼ全ての紅藻系二次共生藻類は各種クロロフィルを生産します。ですから,それぞれの色素はそれぞれの分類群に特有のバイオマーカーと見な素ことができます。重要なことに,クロロフィルとクロロフィルはそれぞれ特有の化学構造を持つ化石ポルフィリンとして保存されることが,クロロフィルの化学的タフォノミー研究より示唆されています (Kashiyama, 2010)。そのため,堆積岩から抽出された化石ポルフィリンを調べることで,当時のクロロフィルとクロロフィルの相対的生産量を見積もることが可能です。近年の海洋微生物学の発展は,現在の海でもピコプランクトンとして緑藻類が量的に重要であること,化石に残らない紅藻系二次共生藻類が非常に多様であることを示していますから,緑藻-紅藻系二次共生藻類の進化史は従来考えられてきたよりも複雑であると考えられます。化石ポルフィリンの研究からこれら藻類の進化の軌跡を記述することで,顕生代の藻類進化の理解に対して重要な貢献が期待されます。


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Yuichiro Kashiyama, FUT